鑑賞のススメ エヴァンゲリオン&日本刀展@上野の森美術館




久しぶりに上野へとやって来た。


目的は、上野の森美術館で開かれているという『エヴァンゲリオンと日本刀展』。


なんだか、そんなのやっているなぁ~程度の興味だったのだけれど、良く見るブログで『見るべしっ』なんて書いてあったものだから。
そういえば刀剣博物館たたら操業を見に行ったし、何より先日の日本科学未来館 でもたたら製鉄と日本刀が紹介されてたじゃないか。


チケットを購入!ここにきて気付いたけど、日本刀展とフィギュア展が開催されていて、別々チケットらしい。


フィギュアはいいから、日本刀だよ!とチケットを買ってテクテクすると、フィギュアの看板に「海洋堂」の文字がっ。


すぐさま引き返して、フィギュアのチケットも買ったったぁ~!


ちょっと恥ずかしかったけど、チケット握り締めて乗り込んだるわ~!とずんずん。


入り口で日本刀とフィギュアのどちらに行くか選択するので、先ずは主目的の日本刀から!


エヴァンゲリオンがお出迎え!


日本刀についての説明から始まっていた。そうそう、エヴァンゲリオン+日本刀の展示会ですからね。


現代の刀匠が製作する渾身の日本刀。なんだか刀剣博物館に来たみたい。


1kg位の日本刀。ずしっ。


等身大(?)フィギュアもお出迎え。そろそろ、エヴァンゲリオンコーナーか?


来たよっ!エヴァンゲリオンものの刀剣が!お堅そうな刀剣業界とアニメのコラボ、よくぞ実現させたね・・・。
なんて思っていたら、やっぱり葛藤があったりしての開催だったみたい。でも、新しい息吹も必要だよね。

ヱヴァとコラボするに当たり、日本伝統文化の世界、刀の世界は保守的なので「なにやっているんだ?」という方もいるんです。でも、我々若い職人は特にそうですが、日本刀の世界も頭打ちの世界で、日本刀を知っているとか、好きだとかいう人口が減っていってるんですよ。ここで何とかしないといけないという切実な思いがあるんです。

このまま伝統文化を廃らせてはいけないという時にこの話が来ました。職人としてもアニメとコラボしてもいいのかな?という葛藤はありました。
でも、伝統文化自体が文化というものは、人と共にある物なんで、たとえ伝統文化であっても、その時代に即した変化をしていかないと取り残されていく。だったら、サブカルチャーであるアニメ、日本が世界に誇るアニメとコラボしても良いじゃないかという思いがある職人が集まってできた展示会なんです。今は、「何てことするんだ!」と言われていても、数10年、数100年たった時にスタンダードになるのでは?と思いコラボしました。そこだけは覚えておいてくださいね!



次の用事が控えているのでテンポ良く行っちゃいます。カウンターソードだそうです。
もう、日本刀と言うよりも、工場とかに置いてありそうな工具のように見えてきたぞ。



刀銘『ビゼンオサフネ』。その大きさに製作期間との兼ね合いで当初よりも小さめに作られたとのこと(4尺→3尺7寸5分)。
それでも、その大きさゆえに、刀匠や研師、装飾も慣れない大きさに戸惑ったそうな。しかし、日本刀らしからぬ、その姿にもかわからず、
美しさと機能性を損なわないように、職人がマジで考えて知識と技術に工夫を凝らしたという解説が!単なる飾り物で無い刀がここに!(凄い)


『ビゼンオサフネ豆太刀』。その姿、形が可愛い。大きさは小さいが、通常の日本刀と同じように製作したとのこと。
江戸時代の五月人形や雛人形のお内裏様の太刀持ちの太刀には、本物の太刀が使われているものもあるそうだ。


漢字と英字が混在していて、良く分からなくなってきたが、薙刀型のもの『弐号機F型用ATF曲刀』
刀身は短いけれども、実用に耐えうる強度を試行錯誤した結果、その重量は通常の刀と同じ程度と言う(そこまで頑張る!?)。


次!


赤銅の一枚板から造り出した職人技!


刀銘『セカンドインパクト短刀』!その本気度が『二千年九月十三日』と刻印とゼーレの紋章(帰ってから調べた)。


会場こんな感じ。混み混みだったら、写真ゆっくり撮れないだろうな(それでも、コアなファンが居座って、なかなか大変だった)。


今回の展覧会をするにあたってのデッサン。


予定通りなのか、間に合わなかったのか、制作中の薙刀。


山下いくと氏と刀匠がデザインやり取りしてイメージ固めて製作(気合入ってますよね)。


『渚カヲル仕様 刀』


爽やかブルーな鞘。鞘の波型紋に苦労し、柄の巻鮫にも苦労した一品だそうです。
日本刀の新しい芽吹き、江戸時代にあったら、傾奇者が大枚はたいて手に入れようとするのでは???


こちらは刀子(とうす)とな???正倉院にも保存されている刀子は、皇族や貴族が愛用したそうです。
華美な装飾がないものは、日常生活に用いられていた代物で、今でいうカッターみたいなものかな。


こちらは、もちろん装飾がある方の刀子。


普段見ることのないものだから、特に違和感がわかないのか、デザインがうまくマッチしているのか???
でも、こんなものをペーパーナイフで使用したらお洒落ですね。和菓子なんかも、ぷすっと刺して食べてみたい。


こちらは男子オタクから感嘆の声漏れてきそうな、『綾波レイ仕様 刀』


刀の解説が物語を意識しての想い入れと、その仕上げ。職人たちの本気度が本当凄い。


とりあえず、最後かな?と思ったら、お次は2階へと。


2階では綾波レイが待ち受ける。


おっと、これは『ロンギヌスの槍』!刀匠のブログにて巨大なものを試行錯誤製作しているという初期段階のお話を読んだぞ。


巨大にして重厚感あるロンギヌスの槍と、その横には製作図。


そう、その制作には苦労のエピソードあり。その解説を記載すると・・・。

【解説】
エヴァンゲリオンが保持してもその全高より巨大なスケールを人間ベースで再現しました。全長332cm。総重量は22.2kg。複数種の金属を重ねたダマスカス鋼を鍛造し、木目の様な地肌を生み出しています。巨大すぎる本作品の作成にあたっては、橋本氏は工房にも手を加えたという、まさに大作です。

【刀身】
表面に現れているダマスカス紋様のおもしろさをご覧ください。日本刀にも同様に、折り返し練り鍛えられることで生じた、地肌紋様があります。それは、日本刀が持つ生命力の現れです。地肌、という日本刀の深みある美しさを知っていただけたら幸いです。

【金属造形作家】
最も苦労したのは、法律的な部分です。展示に辺り、武器ではなく美術品として製作する必要があったため、当初予定していた素材を断念せねばならなくなり、急きょ材料から調達しなおさねばなりませんでした。最後は三日間徹夜で仕上げました。



撮影禁止の下絵(?)コーナーを過ぎて。


『初号機仕様 脇差<序・発・急>』。エヴァンゲリオンの初号機をイメージして作られたという。


式波・アスカ・ラングレーの短剣。欄間透かし彫りで刀身にアスカの姿が!
企画当初は無理だという考えだったけど、刀身彫刻師が『逃げちゃ駄目だ』の精神で試し掘りを繰り返して実現させたという!
鞘にあるマークは職人が漆で仕上げたものだとか!この短剣1振に20代~60代の職人が携わって仕上げたそうです。


伝統ある日本刀文化とアニメ文化の融合に驚きつつ、次!


『零号機仕様 脇差<龍と槍>』。刀身が倶利伽羅龍で不動明王ぽいなと思ったら、そのとおりの着想による製作であった。


こちらはマリをイメージした短刀(既に「マリ」が良く分からんのだが・・・)。


斬鉄剣のごとく『隕鉄から鍛えた脇指』。隕鉄にはニッケルが多く含まれるとのことで、鋼とニッケルを混合。
鋼とニッケルは完全には混じることがないので、その辺の処理に苦労したとか。


『エヴァンゲリオン初号機型 兜』。立派な仕上げです。金属造形作家は女性の方でした。


展示ケースを右に左に。作品がずらりと並ぶ。


『プログレッシブナイフ剣型<丸>』。2次元の世界から3次元に起こして美術刀剣として造り出したとのこと。


『プログレッシブナイフ剣型<角>』。柄は刃をもとにCAD設計して製作したそうだ。


次!


手鉾。正倉院の宝物に5振りだけ現存する古代の武器だそうです。途中の突起が特徴的だとか。


武器の強度を考えて折り畳み式を断念したという短刀だとか(ガチの製作ですね・・・)。


これにてエヴァンゲリオンと日本刀展終了~。


地方の物産展のように、気持ち閑散さを感じるグッズ販売コーナー(スペース広く、陳列に余裕ありですね)。どれどれ。


これ、ちょいと欲しかった・・・(しっかりとした解説と写真が充実にして気合の1冊)。


フィギュアも並ぶ!お次はフィギュア展だぜ~!と気持ち高ぶる。


フィギュア展も行ったるで~。


その前にエヴァコーヒーショップと、その手前にあるエヴァプリクラにて撮影に興じる!


さてと、フィギュア展へと、あれれ!?手にしていたチケットが、無くなっているぞ???日本刀に興奮しすぎて、どこかでロスト。
まさかにそんなことが???という訳で、入り口にあった小さなフィギュアで溜飲下げてスゴスゴ退散するのであった。


展示会を見終えて満足。伝統あって保守的な刀剣業界と人気のアニメがコラボするとは、驚きの企画にして驚きの作品数々。
刀匠から研ぎ師に鞘師、柄巻師、塗師、白銀師と職人勢揃いして、その職人さんがエヴァンゲリオンを観て、その世界観を確認し、
刀剣に想いを込めて試行錯誤しながら造り上げた作品は見事。そんな思い切った斬新企画から、刀剣文化に新しい息吹あると良いな