鑑賞のススメ 和巧絶佳展 令和時代の超工芸@パナソニックミュージアム(July-2020)


本日は初めてのパナソニックミュージアム。新橋駅で降りて、歩いて向かうことに(テクテク)。駅を降りて、見慣れた「パナソニック汐留美術館」の看板。ようやく看板だけでなく、実際の美術館へと。


今回見に行く展示は『和巧絶佳展 令和時代の超工芸』です。超絶的な工芸と言えば、以前に観た「2017年5月驚きの明治工藝」「2017年10月 超絶技巧!明治工芸の粋」 があったなぁ。今回はどんな作品が観られるかな。



テクテク歩いて行くと、目の前にカラフルな壁が…。何か見た事あるぞと、パチリ。調べてみたら、James Goldcrown (ジェームズ・ゴールドクラウン)さんの作品なんだってね。インスタ映えするっていう背景だね。しかし、名前にゴールドとクラウンが並ぶとは、すんごい名前だぞと。



ちなみにで、建物に入るとそこには体温チェックが実施されておりましたよ。以前は空港位でしか見かけなかったのだけれど、今ではあちこちで見かけますよ



エスカレーターで登る途中、見かけた看板。気になって行ってみました。パナソニックのアラウーノですか(そのままやん!)。



使うことはなかったのだけれど、こんな感じ。なるほど、水回り製品だったら、こんな感じでテナントビルで商品アピールできますね!




で、4階に着いて、荷物はロッカーへの収納を促される。こちらは¥100投入式で、返却されるタイプのもの。最近は、こういった施設で有料ロッカーなんて見かけなくなったね。



チケットを購入して、いざ会場へと。そして、撮影OKの展示会 ですよと。




舘鼻則孝(たてはな のりたか)
1985年、東京に生まれる。2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。ポートランド日本庭園(アメリカ)で個展を開催。メトロポリタン美術館(アメリカ)やV&A博物館(イギリス)に作品が収蔵される。

花魁の高下駄をモチーフにした靴。レディー・ガガが着用したことで世界的に有名になった。革に友禅染*2の技法で伝統的な文様を施し、最先端ファッションとして現出させた好例。


最初は、舘鼻則孝さんの作品。もう、言わずと知れた靴製作者ですね。会場の外には、各製作者のインタビュー映像があったのだけれど、舘鼻さんも出ておりました。もう、重鎮みたいな話し方していましたよ(笑)。



どっかの高級ブランドバッグが靴になったかのような作品。しかし、ガラスの反射で撮影が…。



こ、これは! こちらのトゲトゲの赤い靴は、岡本太郎の梵鐘「歓喜の鐘」を思い出しましたよ。



さっきのトゲトゲを見ちゃうと、もう、こちらの靴が普通に見えてしまいますわ。こちらも、撮影が難しい…。





桑田卓郎(くわた たくろう)
1981年、広島県に生まれる。2001年に京都嵯峨芸術大学短期大学部美術学科陶芸コース卒業後、陶芸家、財満進氏に師事。2007年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了した後は、現代アートやファッションの分野でも活躍中。

ポップな色彩の作品で海外でも高い評価を得ている桑田。梅華皮など伝統的な技法をデフォルメすることで、器の概念を覆す不思議な表情の本作品は、圧巻の存在感である。


お次は桑田卓郎さんの作品。最初観て、『な、なんじゃこれは?』でしたよ。なんだか、とんでもないものが並んでいるぞと。伝統工芸を見に来たつもりだけれども、近代アートに来てしまったかのような。まさに、令和の工芸ですわ。



桑田さんは、学生時代にストリートダンスに、はまっていたとのこと。そんな感性と伝統工芸の陶芸をミックスさせたら、こんなんできました、的な感じ? どの作品も、自分の感性を突き抜けてましたよ…。実際に使ってみたら、どんな口当たりなんだろう?と思ってしまいましたわ。隙間ができて、お茶がこぼれ落ちてしまうかもしれんな。





深堀隆介(ふかほり りゅうすけ)
1973年、愛知県に生まれる。1995年に愛知県立芸術大学美術学部デザイン・工芸専攻学科を卒業。2007年、横浜にアトリエ「金魚養画場」を開設。2018年には平塚市美術館(神奈川)や刈谷市美術館(愛知)で個展「平成しんちう屋」を開催。

深堀の作品はアクリル絵具と透明樹脂を用いており、まるで生きているかのような立体的な金魚が人気の理由のひとつであるが、実はこれらは作家のイメージのなかの実在しない金魚なのである。


これこれ、新たな技法が生み出されたよね。透明アクリル樹脂を何層にも重ねて描くスタイル。納涼作品ですな。



深堀さんが活動に思い悩んでいた時に、金魚とアクリル樹脂のコラボを閃いたんだとか。閃いちゃいましたな~。



こちらに大きな作品が。



この金魚が集まる様!葉っぱが落ちる様!金魚の背びれで水面が揺れる様!





池田晃将(いけだ てるまさ)
1987年、千葉県に生まれる。金沢美術工芸大学大学院修士課程を2016年に修了し金沢卯辰山工芸工房へ。2019年に独立し、現代アートの分野でも高い評価を得ている。

自身になじみ深いサブカルチャーの要素を螺鈿など漆の伝統技法を用い表現している池田。レーザーを用いて貝を切るなど現代テクノロジーと作家の技術の融合が宇宙的な美しさを生み出している。


お次の作品は、池田晃将さんのもの。こ、これは~、まさしくデジタルマトリックスの世界ですわ。超未来的な物体に見えて、隙間も見えないどこからかパカッと開いて、何か出てきそうな気配でしたわ。



このデジタルな宇宙感! もっと接写して写真に収めたいのだけれど、自分のコンデジでは全然ピントが合いませんでしたわ~。



付属の拡大鏡で写真をパチリ。ちょっとは宇宙感が伝わったかな。





見附正康(みつけ まさやす)
1975年、石川県に生まれる。1997年に九谷焼技術研修所を卒業後、福島武山氏に師事。2007年に工房を構え独立した。金沢21世紀美術館など国内外の美術館でのグループ展に参加。2019年には伝統文化ポーラ賞奨励賞を受賞。

九谷焼を構成するひとつ、加賀赤絵の大皿。見附は赤絵細描で伝統的に用いられてきた模様ではなく抽象的な文様を自ら作り出し、見事な技術で人知を超えた世界を見せてくれる。


お次は、見附正康さんの焼物。この幾何学模様!伝統工芸と新しいデザインのコラボですわ。何だか目が離せなくなってしまう、デザインだよねと。




大皿だけでなく、小物入れにも伝統工芸と幾何学模様のデザイン。どこか、中央アジアと言うか、異国のものに感じますな。





山本茜(やまもと あかね)
1977年、石川県に生まれる。1999年に独学で截金を始め翌年には重要無形文化財「截金」保持者、江里佐代子氏に師事。2001年に京都市立芸術大学美術学部美術科日本画(模写・水墨画)専攻を卒業。2014年に第61回日本伝統工芸展NHK会長賞を、2015年に伝統文化ポーラ賞奨励賞を受賞。

ガラスで截金を挟み溶着させる截金ガラス。平面に施されていた截金を、山本が三次元の表現に転化させたことで、繊細な模様が立体的になり、さらに半永久的にその美しさを保てるようになった。


こ、これは!美しい~! 円柱の中に美しく立体的にデザインされてますよ。源氏物語シリーズだそうです。第四十帖「御法」と言う作品。見事なもんです。




こちらのお皿に見入っちゃいましたよ。美しや~。夏にこんなお皿で食事してみたいですわ。伝統工芸でありながら、古臭さを感じさせない美しさがありましたよ。



作品ずら~っというのをパチリ。



こちらの茶碗にお皿も、実際の食事で使ってみたいですわ。



香合は使う機会ないけれど、美しや。置物辺りも1つくらい欲しいですわ。



こちらも源氏物語シリーズだったのだけれど、美しや~。こんな置物も欲しいっ。



こちらも源氏物語シリーズの第十九帖「薄雲」(雪明り)。 見事です。



展示ケースで残念だったのが、真上から見ようとすると上面が曇りガラスで、作品が見えなくなると言うこと。





髙橋賢悟(たかはし けんご)
1982年、鹿児島県に生まれる。2012年に東京藝術大学美術研究科修士課程鋳金研究室を修了し2015年から3年間同研究室の非常勤講師を務める。「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」展に選出され作品が全国の美術館を巡回。

アルミの現物鋳造で制作した小花で動物の頭部を形成し、生と死を表現する髙橋。小さく薄いピースの積み重ねである超絶技巧が光る、尊く美しい作品である。


最初、作品を観た時に珊瑚っぽいなと思ったのだけれど、アルミでしたか。骨と花があって、まさしく生と死を表現しておりましたわ。





新里明士(にいさと あきお)
1977年、千葉県に生まれる。2001年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了し独立。東京国立近代美術館などのグループ展に多数参加。2011年には文化庁新進芸術家海外派遣研修員制度によりボストンに滞在。

蛍手の作品で知られる新里の新作。過去作に比べ口径を大きくすることで、上方からの光をより広く受け入れ、繊細な模様が際立つ作品になっている。重力とせめぎ合う技術も見事である。


玄人好かれしそうな作品でしたよ。どの作品もそうなんだけれども、こちらの作品も根気を要する作業の塊ですわ。近くで見ると蛍手の穴が美しい…。こんな大皿で、作業する面積もどでかくなってしまってましたよ。



こちらの容器は…。すいません、こういっちゃなんですが、ゴミ箱が置いてあるのかと思ってしまいました…。すいません。





坂井直樹(さかい なおき)
1973年、群馬県に生まれる。2003年に東京藝術大学大学院博士課程後期課程鍛金研究室を修了し博士学位を取得。2005年金沢卯辰山工芸工房へ。独立後は金沢21世紀美術館などのグループ展に多数参加。

直線的な把手が印象的な鉄瓶。錆びた鉄の素材感と余白の美による洗練された形態が美しい。鍛造による鉄の新しい表現として、オブジェとしても現代生活になじむ作品である。


こちらの作品は錆びた鉄なのだけれど、美しさを感じるものがありますよ。そのレイアウト、そのデザイン。こんな鉄瓶でお茶を淹れてもらいたい!



渋いですわ。





安達大悟(あだち だいご)
1985年、愛知県に生まれる。2012年に金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程を修了し金沢卯辰山工芸工房へ。同染工房専門員を経て、現在は東北芸術工科大学美術科テキスタイルコース講師を務める。

絞り染めの一種で、折り畳んだ布を板に挟んで染める板締め絞りで制作された作品。安達は「にじみ」を模様に取り入れ、発色豊かな現代のテキスタイルを作り出している。


この大きさで、多色染め。どうやってるんかのぉと。解説のとおり、まさしく発色豊かで令和のテキスタイルですわ。今、ちらりとウェブサイトを見てみたら、服やトートバックといった商品があって、興味深いですわ。





橋本千毅(はしもと ちたか)
1972年、東京都に生まれる。1995年に筑波大学芸術専門学群を卒業し、2000年から2年間、東京文化財研究所にて漆工品の修復に携わる。2006年に独立。

螺鈿と平文による花を散らし、螺鈿と蒔絵を施した蝶を把手として取りつけた円形の箱。上質な貝と確かな技術に裏打ちされた華やかな色彩が見事な逸品である。


こ、これまた美しい作品が置いてあるぞ…。螺鈿の作品ですかっ。



「浮線綾螺鈿蒔絵箱」と来ましたよ。こ、これまた美しや~。こんな箱が欲しい! 箱を手に取って、箱の表面をなでなでしたくなる一品ですわ。



とっても良い箱が、ずら~っと並んでおりましたよ。「唐草螺鈿箱」も良い!



溜息ものの作品が並んでましたよ。はぁ~とほれぼれ、行ったり来たり。



素晴らしき作品たち。令和の時代にも伝統工芸で新作生み出してくれて、ありがとう、でしたよ。





佐合道子(さごう みちこ)
1984年、三重県に生まれる。2011年に金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程を修了。東京国立近代美術館などのグループ展に参加する一方、2012年には「ALFAROMEO I AM GIULIETTA THE DRIVE ART」プロジェクトに参加し、2019年金沢美術工芸大学にて博士号取得。

有機、無機の相違を成長、成熟の有無と捉えている佐合は、本作でも細かなヒダを張り巡らし、生きているような表情を与えている。鋳込み成形を用いながら、繊細な技で自然を再解釈した良品。


最後にも、珊瑚的な作品がありました。いや、珊瑚的なというか、珊瑚でしたよ(もちろん、違うけど)。



ブーケの様な、花が集まったかのような。




そんな訳で、「和巧絶佳展令和時代の超工芸」を観終えたのでした。むむぅ~と、若い人たちが(と言っても、20代とかまで若くはなく、30~40代の人達だったけれど)、伝統工芸を現代まで継承・発展させてくれていることに、ありがとうでしたよ。そう思える素晴らしい作品の数々なのでした。はぁ~と溜息ものの美しさでしたわい。